熊本家庭裁判所八代支部 昭和59年(少)73号 決定 1984年2月02日
少年 S・R(昭三九・二・六生)
主文
この事件について審判を開始しない。
理由
一 本件送致事実は「少年は、昭和五八年一二月一八日午後五時ころ、熊本県球磨郡○○村大字○○××番地A方居間において、女子高校生B子が一八歳未満であることを知悉しながら、同人に対しみだらな性行為をなしたものである」というものである。
二 一件記録によれば、少年が、上記日時場所において、B子(昭和四一年三月一一日生)が一八歳未満であることを知りながら同女と性行為をしたことは認められるが、当裁判所は、本件は、熊本県少年保護育成条例一三条一項にいう「みだらな性行為」には該当せず、非行なしと判断する。理由は以下のとおりである。
同条例一三条一項に規定する「みだらな性行為」とは、少年に対して行う社会通念上是認されないような反倫理的な性行為一般を意味するものと解される。
B子及び少年の各司法巡査に対する供述調書によれば、同女は当時高校三年生で、昭和五八年八月アルバイト先で少年と知合い、友人を通じて同年一〇月少年から交際を申込まれ、ドライブをしたり、喫茶店にお茶を飲みに行つたり、少年方に遊びに行つたりして交際していたこと、本件当日は、日曜日で、午前一〇時過ぎから少年の友人方で遊んだり、食事をしたり、ドライブをしたりした後、午後四時ころ、少年が同女を同女方に送つて行つた際同女に家に上がるよう誘われ、家族不在の同女方のこたつに入り、雑談中に性交するに至つたこと、避妊具を使用したこと、同女は少年からの求めを抵抗感なく自然に受入れたこと、その後も少年と同女の交際は続いていること、以上の事実が認められる。
以上の事実によると、相手方である同女の年齢、性的知識、交際経過等に照らすと、本件はむしろ相互に好意を抱いた上での愛情表現と認められ、上記「みだらな性行為」には該当しないというべきである。
三 従つて、本件については、少年に非行がないことになるから、少年法一九条一項を適用して、主文のとおり決定する。
(裁判官 木下順太郎)